Trackmanがレーダーとカメラを融合する理由
Trackman CTOのフレドリック・タクセンが、インドア環境でも正確なボール計測とクラブ計測を実現する独自技術について解説します。
「Trackmanは屋外では優れているが、屋内ならカメラ式のほうが優れている。」
これは、ゴルフテクノロジーに関する議論でよく耳にする考え方の一つです。
弾道計測器業界では、インドアゴルフの計測技術を「レーダーかカメラか」という二択で語ることがあります。カメラはインドア向き、レーダーは屋外向きという説明です。
しかし、Trackman共同創業者兼CTOのフレドリック・タクセンは、この考え方自体が本質を見落としていると言います。
本当に考えるべきなのは、「レーダーとカメラのどちらが優れているのか」ではありません。
重要なのは、「ゴルフショットのどの要素を測定するのに、どの技術が最も適しているのか」です。
レーダーにはカメラにはない強みがあります。
レーダーは物体の動きを直接計測するため、ボールスピードやクラブスピードの測定を得意としています。
一方でカメラは、画素レベルの細かな視覚情報を高精度で捉えることに優れています。
では、なぜTrackmanはレーダーとカメラを組み合わせるのでしょうか。
その理由は、一つの技術にすべてを任せるのではなく、それぞれの技術が得意とする役割を担わせるためです。
Trackman iOは、レーダーとカメラの両方を活用することで、それぞれの利点を取り入れながら、単独使用による制約を最小限に抑える設計になっています。
フレドリックは次のように語ります。
「Trackmanは一つの技術に固執しているわけではありません。目的に最適な技術を採用します。カメラとレーダーを組み合わせることで、両方の利点を活かし、最適な精度を実現できます。それこそがTrackman iOの設計思想です。」
本記事では、なぜTrackman iOがレーダーとカメラの両方を採用しているのか、そしてそれがどのように正確なボールデータとクラブデータにつながるのかを詳しく解説します。


カメラのみの計測技術が抱える課題
カメラ技術は非常に優れていますが、すべての計測をカメラだけで行う場合には一定の課題が存在します。
多くのカメラ式弾道計測器は、異なる位置に配置された複数のカメラを使って奥行きを推定しています。
複数のカメラが異なる角度から捉えた映像を比較し、ボールやクラブが三次元空間のどこに存在するかを計算する仕組みです。
この方法は有効ですが、対象物が遠くなるほど測定は難しくなります。
また、カメラの配置間隔、機械的な安定性、照明環境などに対する設計上の課題も発生します。
照明のわずかな違いであっても各カメラが認識する映像に影響を与える可能性があります。
しかし、カメラがインドアゴルフに適していないという意味ではありません。
むしろ、カメラはインドア計測において不可欠な技術です。
問題は、カメラだけですべてを計測しようとするべきかどうかです。
Trackmanの答えは「No」です。
Trackman iOはインドアでの高精度計測のためにどう設計されているのか
Trackman iOに搭載されているカメラは、全てTrackmanが自社開発しており、レンズ性能や解像度、画像処理パイプラインを含めたシステム全体を最適化しています。
さらに、Trackman iOは周囲の照明だけに依拠しません。
カメラの周囲に赤外線照明を配置し、クラブとボールを常に一定条件で照らしています。
これにより、シミュレーター内の照明環境が変わっても、カメラから見たクラブとボールは常に同じ条件で撮影されます。
また、高解像度イメージングによって、ゴルフボールのディンプル一つ一つを複数のピクセルで捉えることができます。
さらに、非常に高いフレームレートで連続撮影を行い、フレームごとにボール表面の各点がどのように移動しているかを詳細に分析します。
その結果、スピン量だけでなく、スピン軸とジャイロスピンを含むボールの三次元的な回転状態まで計測できます。


レーダーとカメラの組み合わせが精度向上につながる理由
Trackman iOは、高速カメラとドップラーレーダーを組み合わせています。
カメラは非常に高精度な角度情報を取得し、レーダーは精密な速度情報と奥行き情報を提供します。
それぞれが異なる役割を担うことで、単独では発生し得る制約を補い合います。
フレドリックは次のように説明します。
「カメラから角度情報を取得し、レーダーが奥行き情報を提供します。その組み合わせによって、あらゆるデータ項目で高い精度を実現しています。ゴルフクラブを振るための十分なスペースがあれば、ボールの三次元スピンや3D方向を測定でき、その精度は1度未満です。」
毎回自動でキャリブレーションを行う理由
計測精度は、ボールを正しく計測するだけでは成立しません。
基準となるターゲットラインを正しく認識していることも重要です。
例えば左右打出角が1度左だったとしても、「真っすぐ」の基準が少しでもずれていれば、誤った基準に対して計測されることになります。
そのためTrackman iOは、起動時に自動でキャリブレーションを実施します。
インパクトスクリーンにキャリブレーションパターンを投影し、すべてのピクセルがを三次元空間のどこに位置しているかをマッピングします。
その情報を基に、左右打出角の正確なゼロ基準を設定します。
フレドリックは次のように述べます。
「ゼロが本当にゼロであることを確実にしなければなりません。Trackman iOは使用するたびに、自動で再キャリブレーションを行います。ユーザーによる操作は必要ありません。」
この仕組みによって、インドア弾道計測器で発生しやすい大きな誤差要因の一つである「人為的な設定ミス」を排除できます。
一部のシステムでは、アライメントスティックでターゲットラインを設定したり、プレーヤー自身が基準線を定義したりする必要があります。
しかし、その作業にわずかな誤差が生じるだけでも計測結果へ影響を与える可能性があります。
さらに、ボール位置がわずかに動いただけでも基準が変化するケースがあります。
Trackman iOは、このプロセス全体を自動化しています。
ツアープロが求める精度であっても、自宅のシミュレーターを家族で使用する場合であっても、システムが自動的に正しい基準を設定します。
プレーヤーはキャリブレーションやアライメントを意識する必要がなく、ゴルフに集中できます。
また、人の介在を減らすという考え方は、キャリブレーションだけに限りません。
シールやマーカーが不要な理由
インドア用弾道計測器の違いは、ボールをどう測るかだけではありません。
計測を始める前に、プレーヤーへ何を求めるのかも重要な違いです。
一部のカメラベースのシステムでは、クラブに反射マーカーを貼り付けたり、特殊なマーキングが施されたボールを使用したりする必要があります。
これらのマーカーは、カメラが追跡するための基準点として利用されます。
Trackman iOは根本的に異なるアプローチを採用しています。
その理由は、高解像度カメラが人工的な基準点に頼らなくても、クラブそのものを認識できるからです。
クラブの溝、スコアライン、トゥ、ヒールなどの特徴を認識し、スイング中の動きを直接追跡します。
この違いは単なる利便性の問題ではなく、計測誤差の原因を減らすことにもつながります。
もしマーカーの取り付け位置がずれていれば、システムはクラブそのものではなく、そのマーカー位置を計測することになります。
また、練習中にマーカーがずれたり、剥がれたりすることもあり、そのたびにプレーを中断して再設定しなければなりません。
フレドリックは次のように述べています。
「マーカーだけを追跡している場合、その計測はマーカーの位置そのものを基準にしています。もしマーカーの位置が正確でなければ、当然ながら計測精度にも影響します。」
複数の生徒を指導するコーチの場合、この手間はさらに大きくなります。
クラブを替えるごとに新しいマーカーを貼る必要があるかもしれません。
数球打っただけでマーカーが剥がれれば、再び作業をやり直す必要があります。
それはゴルフそのものではなく、技術上の制約による負担です。
Trackman iOは、クラブをそのまま認識することで、この負担を取り除いています。
ステッカーや特殊なマーキングは不要で、どのゴルフボールでも使用できます。
必要なのは、クラブを振るための十分なスペースだけです。
これは単に使いやすさを追求しているわけではなく、Trackmanの設計思想そのものです。
ゴルファーが技術に合わせるのではなく、技術がゴルファーに合わせるべきだという考え方です。
フレドリックは次のように語っています。
「ユーザーがアライメントや設定といった技術的な作業に煩わされないように技術を開発してきました。そうしたことは、すべて裏側で自動的に行われるべきなのです。」


Trackmanはレーダー中心ではなく、計測中心である
Trackmanはレーダーだけの技術であり、屋外向けの製品だという認識を持たれることがあります。
しかし、それは弾道計測器技術を巡る代表的な誤解の一つです。
Trackmanは今後も、スピン計測、芯を外したインパクト、実測データと計算データの違いなど、弾道計測器に関する誤解について取り上げていく予定です。
どのテーマにも共通しているのは、一つの原則です。
それは、あらゆる主張は証拠によって検証されるべきだということです。
Trackmanの技術は、仮説や思い込みの上に構築されているわけではなく、計測に基づいて構築されています。
すべてのハードウェア、アルゴリズム、検証プロセスは、ゴルフショットを可能な限り正確に計測するという一つの目的のために設計されています。
世界中のTrackmanシステムでは、毎年数十億ショットが記録されており、その背後には、継続的なエンジニアリング、科学的なテスト、そして実際のデータとの検証があります。
だからこそ、世界トップレベルの選手、コーチ、クラブフィッター、機器メーカーがTrackmanを採用しているのです。
フレドリックは最後にこう語ります。
「Trackmanは屋外では最適だが、インドアではそうではないという誤解があります。しかし実際には、Trackmanは屋外でもインドアでも優れています。Trackman 4でもTrackman iOでも、ユーザーが得るのは『Trackmanの真実』ではありません。得られるのは真実そのものです。」
よくある質問
Q. Trackman iOはレーダー式ですか?それともカメラ式ですか?
Q. 両方です。Trackman iOはドップラーレーダーと高速カメラを組み合わせています。カメラは角度や視覚情報を取得し、レーダーは速度と奥行き情報を取得します。それぞれが得意な計測を担当する設計です。
Q. Trackmanは屋外専用ですか?
A. いいえ。Trackman iOはインドアゴルフ向けに設計されており、レーダー、高速カメラ、赤外線照明を組み合わせた天井設置型システムです。Trackmanの考え方は屋外ならレーダー、屋内ならカメラとどちらかに限定するのではなく、ショットの各要素に最適な計測技術を活用することです。
Q. カメラのみの弾道計測器にはどのような課題がありますか?
A. カメラは非常に高精度な視覚情報を取得できますが、三次元位置を求めるためには複数カメラによる奥行き推定が必要です。そのため、カメラ配置、安定性、照明環境などが重要な要素になります。Trackman iOはレーダーを組み合わせることで、それらを補完しています。
Q. Trackman iOはインドアでもスピンを正確に測定できますか?
A. はい。Trackman iOは高解像度・高速度カメラを使用し、ボール表面の動きを追跡します。スピン量だけでなく、スピン軸やジャイロスピンを含むボールの三次元的な回転状態も計測します。3Dスピン方向は1度未満の精度で計測されます。
Q. クラブ用ステッカーや特殊なボールは必要ですか?
A. いいえ。Trackman iOはクラブの溝やスコアライン、トゥ、ヒールなどを直接認識できるため、クラブへマーカーを貼る必要はありません。ボールも特別なマーキングなしで使用できます。
また、マーカーを使用しないことにより、ステッカーがずれたり剥がれることによる潜在的なエラーも防ぐことができます。
Q. Trackman iOはどのようにキャリブレーションを行いますか?
A. システム起動時に自動で再キャリブレーションを実施します。インパクトスクリーンへキャリブレーションパターンを投影し、各ピクセルの位置を三次元空間上でマッピングすることで左右打出角のゼロポイントを設定します。
Q. なぜ赤外線照明を使用しているのですか?
A. カメラがクラブとボールを常に一定条件で認識できるようにするためです。周囲の照明環境に左右されにくくなり、安定した画像取得が可能になります。また、赤外線は可視光の外側にあるため、プレーヤーは照明の発光を認識しません。









